ローブを纏い、ケタケタと笑う私はこのハイラルに棲む魔法使い。
遥か昔、この国が大いに発展してした時代。
私たち一派は、魔法使いの最高位である大魔導師カロックさま率いる多くの魔法使いと共にハイラル王家に仕えていました。
偉大なるハイラル王はトライフォースの力を使いこの国を繁栄させていました。
しかし、偉大なハイラル王も所詮は人間です。
王は亡くなる前に、次期この国の王として跡を継ぐものがトライフォースを扱う素質に恵まれた者かどうかを考えました。
その頃の王家には、若い王子と姫がおりました。
"自分が亡くなった後は王子がハイラルの王としてこの国を統べることになるだろう"
ハイラル王は悩みました。
トライフォースは誰にでも扱えるものではありません。
トライフォースを使うには知恵・力・勇気。それら3つの均衡が必要なのです。
もし素質がない者が手にすれば…
三つのうち最も自分に見合うトライフォースだけが宿り、あとの二つはトライフォースによって選ばれた素質ある者に宿ります。
王子は穏やかで心優しいが、どこか頼りない。
トライフォースを扱う素質がないと判断したハイラル王は、心苦しくも知恵と力のトライフォースだけを王国に残し、「勇気のトライフォース」は大神殿に隠すことにしました。
ただ隠すだけでは悪しきものに狙われてしまうので、奪われることのないように6つの神殿に守護神を置き、最深部にクリスタルを納めると大神殿への封印が解かれるようにしました。
大神殿の中は6つの神殿と比べても複雑な迷宮で、最深部にはハイラル王と信頼のおける魔術師たちが造り出した人工生命体『大守護神ボルバ』によって勇気のトライフォースは堅く守られました。
ボルバを倒し、そして最後は自分自身との戦いに打ち勝ち"勇気"を示すことができた者に「勇気のトライフォース」が継承されるようにしたのです。
"王子には悪いことをしたが、これもこの国が為"
ハイラル王は、勇気のトライフォースの隠し場所は王子には伝えず、姫にだけその秘密を伝えました。
暫くしてハイラル王は寿命尽きて亡くなり
その後は王子が王の座を継ぐことになりました。
しかし、トライフォースを完全体で受け継ぐことができなかった王子は次第に不満を覚えます。
勇気のトライフォースはどこにあるのか。
"完全体トライフォースを手に入れることさえ出来れば…"
ある日側近の魔術師から、『姫がその秘密を知っている』と噂に聞きました。
穏やかだった王子は瞬く間に人相を変え、姫にトライフォースの在処を教えるよう脅しました。
なかなか口を割らないゼルダ姫に王子はさらに詰め寄り、そして痺れを切らした側近の魔術師は"永遠の眠りにつく魔法"をかけてしまいました。
あぁ、やってしまった。
一瞬の過ちを犯した直後、魔術師は死にました。
王子は我に返り、その場に倒れた姫の前で後悔し泣き崩れました。
その姫の名は『ゼルダ』
王子は、以後このような悲劇が二度と起こらないよう戒めとして、またこの悲劇を忘れることのないように今後生まれる王家の姫には必ず「ゼルダ」と名付けるように命じました。
…
ハイラル王家に仕え、王子の側近をしていた私の名前は『ウィズローブ』
かつては善良な心を持ってハイラル王家に仕えていましたが、ハイラル王が亡くなり王子の側近になってからは、徐々に陰で支配していくようになりました。
勇気のトライフォースを探す王子。
"完全体トライフォースを手に入れることさえできれば…"
その気持ちは王子と全く同じでした。
私は勇気のトライフォースの秘密をゼルダ姫が握っていることを知り、王子に伝え、そして王子を陰で操りました。
なかなか口を割らないゼルダ姫に業を煮やした私は、姫に永遠の眠りにつく魔法を唱えてしまいました。
あぁ、やってしまった。
一瞬の過ちを犯した直後、私の魂はこの世から消滅しました。
…
この出来事により、ハイラル王家に仕えてきたウィズローブ一派はその立場を失うこととなりました。
そうしてこの時代のウィズローブたちは「ゼルダ姫を眠らせた罪」でハイラルから追放されて、姿を消したのです。
そんな悲しい過去から長い年月が経ち、また私たちはハイラルに帰ってきました。
今度は厄災ガノンに忠誠を誓うものとして…。
゛このお話は、ハイリア史 敗北ルート後半(初代ゼルダの伝説の少し前)に起こったとされる「初代ゼルダ姫の悲劇」(または「初代ゼルダ姫の伝説」)という出来事です。
なお情報は全て公式資料に準拠しますが、同名でも全くの別物である可能性や、また詳細不明な部分については個人的な所感を含みますことご了承下さい。゛