ブレスオブザワイルドの時系列は現時点では明かされていない。だが、時系列の一番最後だということはこちらのインタビューで語られている。
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また、時系列を明かさない理由についてはマスターワークスの中でこのように語られている。
"こちらが限定的な時系列を提示したら、それが正解になってしまいますから、想像する余地がなくなってつまらないですよね。そういった想像する楽しみを、ゲームを遊んだ後もずっと継続していただきたかったので、今回はあえて明言しないことにしました。みなさんなりの答えを見つけてほしいなと思います。"(引用:マスターワークスP413)
この発言からも、公式設定として答えは既に決まっているといえるだろう。
私が知りたくてたまらない事実は既に存在しているのだ。
ならばお言葉通り、その事実が明らかになるその日まで自分なりの考察を目一杯楽しみたい。
ということで、今回はブレスオブザワイルドの時系列を考えるにあたり、そのヒントとなりそうなものを時系列ごとに整理してみた。
時系列のおさらい
現在ハイラル史は時のオカリナを分岐点として3つの時系列が存在する。
時のオカリナで勇者がガノンに勝利した世界の「時の勇者勝利 大人ルート」
時のオカリナで勇者がガノンに勝利した後に7年前に帰還した世界の「時の勇者勝利 子供ルート」
時のオカリナで勇者がガノンドロフに敗北してしまった世界の「時の勇者敗北ルート」
これら3つの時系列のうち、ブレスオブザワイルドはどこに続くのか。
3つの時系列が収束した世界か、それともどの時系列にも繋がっていないのか。
ブレスオブザワイルド本編に散りばめられたヒントを、各ルートごとに見ていこう。
敗北ルート
ハイリア文字
ハイリア文字といえば時代によってその形状は様々ではあるが、それらは時系列で見てみると、なんとなく分けられているようにも思える。
気になるブレスオブザワイルドだが、その文字は神々のトライフォース2やトライフォース3銃士に使われているものと同じだ。
すなわち、敗北ルートで使われている文字である。
文字の形状は、その世界観との調和を重視している点もある。
トワイライトプリンセスでいうと、華美な装飾の多い世界観に合うように曲線と記号を用いた文字であったり、風のタクトの頑張れば読めそうなカタカナ風の文字は、時のオカリナ時代の文字の印象を残しつつもよりもはっきりとしたデザインになっており、そこに時オカから続く時代の流れを感じさせる。
ブレスオブザワイルドにこの文字が採用されたのは、その世界観に合わせてなのか、それとも敗北ルートから繋がるという歴史的観点からだろうか。
息吹の勇者服
ブレスオブザワイルドでは「アタリマエを見直す」というコンセプトの基、これまでの勇者のトレードマークであった緑衣をやめて、青い「英傑の服」が採用された。
しかし緑衣を求めるファンへの心遣いか、やはり今回も緑衣は褒美として用意されていた。
勇者の緑衣は初代ゼルダの伝説から始まり、時のオカリナ、トワイライトプリンセス、スカイウォードソードと時代に合わせてそのデザインも進化してきた。
ところが、息吹の勇者服といえば実に素朴だ。
その素朴さはブレスオブザワイルドの大厄災によって何もかもが一掃された後の大自然とよくマッチしているが、気になるのはそれが敗北ルートの緑衣のデザインとの共通点が多すぎることだ。
詳しくはこちらの記事を参照
個人的には、息吹の勇者服は敗北ルートを意識しているのではないかと、そんな風に思えてならない。
時のオカリナの賢者
神獣ヴァ・ナボリスとヴァ・ルッタの名前の由来は時のオカリナのナボールとルト姫から名付けられたとされている。(※1)
そしてその二人は「賢者」だったとある。
これは3つの時系列のうち、「子供ルート」にはおそらく当てはまらない。
何故なら時の勇者が7年前に帰還した子供ルートでは、ガノンドロフの陰謀を未然に防いだ為、六賢者は目覚めていないと考えられるからである。
すなわちこの「賢者」という言葉は、敗北ルートもしくは大人ルートと考えるひとつの指標となるのではないだろうか。
※1ルーダニアとメドーについては時オカのダルニアと風タクのメドリと推測できるが、ブレスオブザワイルドの歴史にはそうした文献が一切残されていないことからあくまで推測の域を出ないものである
台座周りの石
マスターソードの台座周りにある6つの石は各種族を表している。
これが意味するものは、"時のオカリナの六賢者"だといえるだろう。
詳しくはこちらの記事を参照
先程と同じく、六賢者が活躍するのは敗北ルートか大人ルートのみであることから、これもまた時系列のヒントとなるのではないだろうか。
ハイラルの歴史
マスターワークスのハイラルの年表を引用する。
(画像引用:マスターワークスP354.357)
ここに記されている「魔獣ガノンへと姿を変え、封印される」というのは、ガノンドロフが死んでしまう子供時代には当てはまらない。(※2)
※2時のオカリナの数年後に処刑されるも力のトライフォースが覚醒し処刑は未遂に終わる。その後影の世界で力を増大させ復活したが勇者によって倒される。後に「4つの剣+」で転生したガノンドロフが誕生するが別人であるためここでは省略する。
また、「幾度も復活するガノンを封印」という部分については、大人ルートで海に沈んだガノンドロフはその後復活をしていないことから、現在明らかになっている歴史だけを考えると大人ルートにも当てはまらない。
よって、ガノンを封印した後、幾度も復活を果たしやがて厄災ガノンとなったというのは敗北ルートにおけるガノンの立ち位置と最も一致する。
敗北ルートのガノンというのは、神トラ以降、ふしぎの木の実、神トラ2、初代でもそうであったようにもはや人の形を成しておらず、BSゼルダの伝説 古代の石盤(※3)やリンクの冒険では妄念のような存在となっている点からも、このマスターワークスに記されている歴史と一致する部分も多いのである。
※3「BSゼルダの伝説 古代の石盤」とは、BSアナログ放送を利用したスーパーファミコンの周辺機器「サテラビュー」を使うことで遊べた音声連動ゲーム。舞台は神々のトライフォースの6年後、ガノンは再び世界を脅かす。神トラでガノンは勇者によって倒されたはずだったが邪悪な気は封印されておらず、ガノンは肉体を取り戻すために強き者を取り込もうとしていた。あくまで派生作品ではあるが、この頃からガノンの肉体と魂の分離が描かれていることに注目したい。
ライネル
強敵ライネルが登場するのは敗北ルートのみである。
初代ゼルダ姫の伝説
ハイラル王の手記に見逃せない文章がある。
この"王家の習わし"というのはおそらくリンクの冒険で語られる「初代ゼルダ姫伝説」もしくは「初代ゼルダ姫の悲劇」と呼ばれる出来事だろう。
初代ゼルダの伝説の少し前、偉大なるハイラル王の娘ゼルダがある魔術師によって永遠の眠りの呪いにかけられた。その事件に加担していた兄王は我に帰りひどく後悔した。
兄王はその悲劇を決して忘れぬよう、以後王家に生まれた姫には必ず「ゼルダ」と名付けることを命じた。
ハイラル王の手記にある"王家の習わし"がこのことを指しているのならば、ブレスオブザワイルドの歴史は敗北ルートから続くものだといえるだろう。
初代ゼルダの伝説と同じハイラル
任天堂公式HPのハイラルの今と昔を比べてみた | トピックス | Nintendoにこのような記述がある。
"ブレスオブザワイルドは1986年に発売された初代『ゼルダの伝説』と同じハイラルが舞台です。今回は、この時代の異なる2つのハイラルの世界を比べてみました。"
この言葉を素直に受け止めるならばこれは敗北ルート以外に考えられるだろうか。
ブレスオブザワイルドは他にも、ロゴ、ガーディアン、メインイラストのラフ案など初代から着想を得たとされているものが多くある。
初代ゼルダの伝説から続く歴史が、そこにあるのかもしれない。
子供ルート
続いては子供ルートのヒントとなりそうなものを挙げていく。
ゴロン族の英雄
ゴロンシティのシンボルとなっているこの彫刻は、過去のゴロンの英雄たちだろうか。
ゴロン族の像は全部で四体。一番奥の大きなものはおそらくダルケルだろう。
その前にいるのはダルニアとその息子"リンク"?
いや、玉のネックレスからしてムジュラの仮面のダルマーニ3世だ。子供のゴロンは髪の毛の特徴からして長老の息子だろう。
そして後ろ側にあるこの像は、おそらくトワイライトプリンセスの長老ドン・コローネだ。
見た目と"長老"という立場からの推測だが、その他の名も無きゴロン族と考えるよりかははるかに可能性は高いはずだ。
ダルマーニ3世と長老の息子そしてドン・コローネはいずれも子供ルートにおけるゴロン族であり、ここでゴロン族の歴史が子供ルートから繋がるものである可能性が出てくる。
ゴロン族といえばその歴史はかなり長く、女神ハイリアの時代からその存在が確認されている。
しかし敗北ルートには出てこない(※4)ことから、そもそもゴロン族の存在自体が勝利ルートの根拠といえるかもしれない。
※4ふしぎの木の実に登場するがラブレンヌとホロドラムは異世界である
だが、ゴロン族というのはいつの時代もその見た目がほとんど変化しない。
ゆえに、このゴロン族が誰なのかは謎に包まれたままである。
陰りの鏡?
ヤシノ遺跡に残された謎の円形の遺物は、トワイライトプリンセスの陰りの鏡を思わせる。
あくまでそれを思わせるだけでありこれ以上の根拠は何もないのだが…
砂漠の処刑場
ゲルド砂漠には「処刑場跡」という場所があり、現在ではその遺跡の一部が残されている。
砂漠の処刑場といえば、トワイライトプリンセスだ。
そこはガノンドロフの処刑が執行された場所。
だが当時の面影は全くといってほどない上、処刑場という施設自体珍しいものでもない。
これもまた根拠不十分なものである。
子供ルートと繋がるものは他に思いつかない。とはいっても、それを否定するつもりはない。
子供ルートの可能性を見出す有識者が現れないだろうか。
大人ルート
最後に、大人ルートと繋がりそうなものを挙げていく。
リト族の存在
リト族は風のタクトで初登場。そのルーツは時のオカリナのゾーラ族が進化したものだ。
生き物が住めない海となった世界で水の民ゾーラ族は100年のうちに翼を生やすという恐るべき適応力で鳥類に進化した。
ブレスオブザワイルドのリト族が風のタクトのリト族を起源とするものかは定かではないが、神獣の名前にメドリを思わせるメドーという名前がつけられていることからも、リト族の存在は大人ルートを考えるにあたり外せないものである。
ナンの歌
引き続きリト族の話になるが、ナンが歌っている「怪鳥を鎮めし勇者の帰還」とは、風のタクトのジークロック戦の曲の一節だ。(参考:ブレスオブザワイルドオリジナルサウンドトラック)
リト族には一万年以上も昔の伝承が今なお歌として受け継がれているのだろうか。だとしたら、風のタクトの歴史がそこにあるに違いない。
ウオトリー村とプロロ島
ウオトリー村は風のタクトのプロロ島ではないかという噂がある。
展望台や、村の特徴などが一致しているからだ。
さらにウオトリー村の東にあるウーロコ岬はプロロ島のブサイク岩の置かれている場所と地形がかなり似ている。
プロロ島とウオトリー村の位置や方角は異なっているが、村の特徴だけでなく地形まで一致しているのは単なる偶然とは思えない。
もしかしたらウオトリー村は、太古の時代にプロロ島と呼ばれた場所だったのかもしれない。
以上が、ブレスオブザワイルドの3つの時系列の可能性を考えたものとなる。
もちろんこれだけでなくまだまだ私の知らないものがあるだろう。
ブレスオブザワイルドは3つの時系列のうち、どこに繋がっていてもおかしくはない。
色々と根拠を集めてみたものの、その全ては一万年という空白の期間によっていくらでも解釈が変わるからだ。
いつか公式からの時系列の公表があるだろう。もしかしたら続編でも時系列に関するヒントが出てくるかもしれない。
一万年と、それよりもはるか昔。ブレスオブザワイルドのハイラルはどんな歴史を歩んできたのか、過去のハイラルに思いを馳せる。
歴史を紐解くその時が待ち遠しい。
《YouTube》