【BotW】もっと知りたい!カッシーワの師匠

 

※当記事では「厄災の黙示録」と「英傑たちの詩」の内容を含みます。


百年前、ハイラル城に仕えたひとりのシーカー族の青年がいた。

彼は宮廷詩人として仕えていたが、具体的にどんな楽器を使ってどんな詩を歌い、どんな場面で披露していたかはどこにも記録がない。
だが、ゼルダの遺物調査に同行していることを考えると王のお眼鏡にかなっていたか、よほど信頼のおける人物だったに違いない。

 

のちに彼は、ある研究に生涯を捧げることになる。


嫉妬、絶望、決意、弟子との絆。

 


今回は、そんな心温まるエピソードの数々に胸を打たれた人も多いであろう「宮廷詩人」について考えていく。

 

まずは彼が歩んできた人生を振り返る。

 

 

 

 

城に仕えた宮廷詩人

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ゼルダが修行を始めた頃に、宮廷詩人は城にやってきた。

詩人でありながら古代文明の知識もあったといい、ゼルダと共に遺物調査に向かうなど聡明な若者だったことが窺える。

 

ゼルダとは歳が近かったとされており、年齢差5歳以内と想定すると、おそらく厄災復活時の年齢は12〜22歳くらいだろうか。


「宮廷詩人」というからにはきっと城で詩を作り披露していたのだろう。

 

ちなみに後の弟子となるカッシーワの衣装は中世ヨーロッパの貴族を参考にされているらしい。(参考:マスターワークスP123)
"和"の要素が強いシーカー族の彼はどのような風貌をしていたのだろうか。
なかなか宮廷詩人としてのイメージが浮かばないだけに気になるところである。

 


そんな彼は次第に姫に恋心を抱くようになる。
"身分違いの恋"といわれているが、決して宮廷詩人の身分が低かったわけではなく、姫という高貴な存在と比較してそう書かれているのだと私は解釈している。

しかし、姫は近衛騎士であるリンクに想いを寄せていることを知り、その恋は儚くも散ってしまう。

 

"嫉妬"
彼はリンクに嫉妬していた。
22歳の男性が歳下の青年にこうした感情を抱くだろうか。嫉妬という感情は宮廷詩人の精神的な幼さが滲み出ているように思う。


だから個人的にゼルダやリンクと同年、もしくは歳下の少年という風に勝手にイメージしている。

 


大厄災

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夕刻。厄災ガノンは突如として現れた。

城にいた宮廷詩人は"厄災"と遭遇するも、俊敏なシーカー族だったため真っ先に城から逃げカカリコ村へ避難できたそうだ。

その道中、おびただしい数のガーディアンが押し寄せるクロチェリー平原で最期まで姫を護りながら力尽きたリンクを目撃する。

 

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その後辿り着いたカカリコ村で、インパから事の次第を聞いた彼は決意した。

 

姫を助けるために、自分にできる務めを果たそうと。

 


そうして彼は「古の勇者の詩」を求める長い旅に出た。

 


生涯を捧げた研究

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ハイラル各地に古の勇者を称えた詩が残されている。
高度文明が花開く一万年前にも厄災に立ち向かった勇者がいた。古の勇者が乗り越えたであろう試練が今もどこかに眠っているという。
それらを探し出し、その地に伝わる詩を研究し、いつか目覚めるリンクに伝えることが自分にできる精一杯の務めだ。

 

ハイラル全土を渡り歩く彼はもはや"宮廷詩人"ではなくなっていた。とはいえ吟遊詩人として活躍していたという話も聞かない。
人知れず、研究に身を捧げていたのかもしれない。

 


そんな日々の中で運命の出会いが訪れる。
リト族の「カッシーワ」が弟子入りする。

 

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コンサーティーナを悠々と奏でるカッシーワは信頼のおける弟子だった。
同時に彼は、宮廷詩人から"師匠"となった。

 


晩年、師匠は自分の願いをカッシーワに託す。
万が一、役目を果たせなかった時はいつか目覚める勇者にそれを伝えてもらいたい。

 

103〜119歳(※1)。師匠は死期を悟っていた。
弟子に全てを託し、その生涯を終えた。

※1師匠は数年前に亡くなったとされている。数年前を3〜9年と仮定し没年103〜119歳と推定

 

 

 

遺志を継いだカッシーワ

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カッシーワは師匠を心から尊敬していた。
だからこそ愛する妻と子供たちを置いてリトの村を離れ、師匠との約束を果たすため世界中を旅していた。

 

旅の拠点は「ワシュアの丘」という場所にある。

 

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真下にある祠の台座の存在を知ったのはリンクが目覚めた後であることから(※2)。カッシーワがここに拠点を構えたのは最近のことと考えられる。

※2カッシーワの日誌にて、塔が出現した後にワシュアの丘に伝わる詩を発見している

 

ワシュアの丘を選んだのは彼なりの理由があるのだろう。
詩を求める旅の合間にここで羽を休める際には、故郷であるリトの村を眺め家族を想う。

 

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約束を果たすまで村に帰るつもりはなかった彼にとって、家族という存在は癒しであり支えだったに違いない。

 


生前、師匠とどれだけの話をしてきただろう。
ハイラルの伝承はもちろんのこと、大厄災の悲劇、近衛騎士の活躍、自身の恋愛についてまで師匠は包み隠さず話してくれた。

 

だからふと現れた青年が腰にシーカーストーンを携えているのを見た時、それが近衛騎士だと直感した。
真実を伝えるのが今でないことも分かっていた。

 

必ず姫を助け出してくれるとそう信じ、カッシーワは各地でリンクがやってくるのを待つことにしたのだろう。

 

 

師匠の願い


全ての古の詩をリンクに伝え、師匠とカッシーワの約束は無事果たされた。

師匠は百年前の姫と近衛騎士にまつわる詩を作っていたという。

 

『勇者の詩』

それは師匠から教わった最後の詩。カッシーワは師匠との約束を果たし終えたら、この詩とともに全てを伝えようと心に決めていた。

 

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ー勇者と姫巫女 ともに手を取り 再びハイラルに光を取り戻さんー

 

「勇者の詩」は師匠の願いそのものでもあったのだろう。

 


師匠が姫に恋心を抱いていたこと、姫は近衛騎士に想いを寄せていたこと、そしてリンクこそがその近衛騎士であること。


最後に、必ず姫を助けて欲しいと。
今、ようやく全てを伝え終えた。


そうして、師匠とカッシーワの役目は終わった。
これからは最愛の家族とともに、詩を紡いでいくのだろう。

 

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以上が、師匠の人生を振り返ったものである。

 


ここからは師匠の人物像について更に掘り下げていきたい。

 

厄災復活時の行動の矛盾点や、師匠が大切に持っていたというあるもの。そして「厄災の黙示録」での彼の存在を考察していく。

 

 

 


厄災復活後の不可解な行動


厄災が復活した時、城にいた師匠はそこから真っ先にカカリコ村へと逃げたとされている。
厄災と遭遇し、恐怖に慄いたか。

 


私は違うと思う。

師匠が通ったルートとその後の証言には、不自然な点があるからだ。


まずは師匠が通ったであろうルートを見ていただきたい。

 

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ハイラル城からクロチェリー平原を経由してカカリコ村へ向かったとされるルートはおそらくこんな感じだろう。


かなりの遠回りだ。

 

カカリコ村への最短ルートはこの通りである。

 

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残党兵やゼルダがこの道を通っているため(参考:マスターワークスP377.378)、橋が落ちたり敵の侵攻などでこのルートが使えなかったということはないはずだ。
故郷であるなら尚更土地勘もあるはずなのに何故大きく南から回って逃げる必要があったのだろう。

 


ちなみにゼルダとリンクもカカリコ村へ向かっていたが、クロチェリー平原を通ったのはちゃんとした理由がある。
城から逃げる際、ガーディアンの標的であるゼルダとリンクは敵に見つからないように森の中の道を通って逃げなければならなかった。

 

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また、取り残された多くの民間人をハテール地方へ向かわせるため人々を南の方へ誘導しながら双子山を抜けたのだ。

 

だが、師匠が向かったのは故郷のカカリコ村であるためこの経路で逃げる必要はなかったはずである。


不可解なのはそれだけではない。

 

厄災復活直後のリンクとゼルダの動きはこのように推測されている。
ラネール山の麓→カカリコ村→ハイラル城→ハイラル平原南下→双子山→クロチェリー平原

 

とんでもない距離を二人して走ってきている。
この距離は普通に走った状態で推定12時間以上はかかり、その後ゼルダがデクの樹の元へ着いた時には既に日が昇っていることが確認できる。

 

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厄災復活直後に逃げたはずの俊敏なシーカーである師匠がカカリコ村へ向かう途中にクロチェリー平原で二人とばったり遭遇するなど、時間的にあり得るだろうか。

 


師匠は、ウソをついているのではないだろうか。

 


不自然な退避ルートや話の整合性がとれない理由を、私なりに考えていきたい。

 


師匠がとった行動とは?

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厄災復活日、ゼルダは朝からラネール山へ向かい修行をしていた。
そして夕方に厄災が復活する。

 

師匠は日頃からゼルダと物理的な距離も近かったため、厄災復活日のゼルダの行動を把握していたとしても不思議ではない。


ラネール山に修行に出ていることを知っていた師匠は、厄災が復活した時、誰よりも早くゼルダを探しに向かったのではないだろうか。

 

退魔の剣に選ばれし剣士とて、自分と同じ一人の青年だ。
師匠は自分もゼルダを守るつもりで真っ先に動き出したのではないだろうか。

 


ラネール参道をはじめ手当たり次第に捜索し、夜が更けた頃ようやくハテノ砦で二人を見つける。

 

だかもう遅かった。
リンクは大量のガーディアンの猛攻に為す術なく力尽きてしまう。
そしてゼルダはリンクを決死の覚悟で守り、リンクを想う気持ちから遂に封印の力が解き放たれた。

 

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その一部始終を見ていた師匠はもう、分かっていただろう。


ゼルダを救うのは自分ではない。そしてゼルダを救うために自分が取るべき行動も。

 


その後の展開は早かった。
即座にシーカー兵が駆けつけリンクを回生の祠へ運び、プルアとロベリーが処置を施し、ゼルダはカカリコ村経由でマスターソードをデクの樹の元へと運びガノンを抑えるため一人城に向かった。

 

ゼルダの機転の速さ、ゼルダを導いた剣の精霊、すぐさま救助に駆けつけたシーカー兵。瀕死状態のリンクを救うべく一刻の猶予もない中で、全てが奇跡的に動いていた。

 

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ゼルダを捜索中だったシーカー兵を二人のもとに向かわせたのは師匠だったのではないだろうか。


もしあのタイミングで動きださなければリンクは助からなかったかもしれない。
あの奇跡の裏で、師匠は二人のために誰よりも奔走していたのかもしれない。

 

 

と、そんなことをわざわざ弟子にいう必要はなかった。
大厄災から百年が経って多くの人たちは厄災は終息したと思っているが、師匠は今なおハイラル城でゼルダが一人戦い続けていることを知っている。

 

大厄災が終わっていないのにあの日の出来事を思い出として語ることなどできない。
もしかしたら少しばかりプライドもあったのかもしれない。

 

だから厄災復活直後に自分がとった行動を話すことはしなかったのではないだろうか。

 


真っ先に逃げた臆病者だと。

弟子の前では笑いながら、そんな風に伝えていたのかもしれない。

 

 

 


厄災の黙示録での師匠


厄災の黙示録では百年前が描かれるとだけあって、師匠の登場を密かに期待していたものである。
だがそれらしき人物は見当たらなかった。

 

それもそのはずだ。厄災の黙示録はスピンオフでありその内容はブレスオブザワイルドの百年前を完全に再現しているわけではない。
しかし私はスピンオフだとしても登場するキャラクター達が本編と全く無関係だとは思っていない。

 

ブレスオブザワイルドの占い師について考えたこちらの動画では「アストル」という人物像について、ブレスオブザワイルドの占い師が暗躍していた事実をスピンオフとして描いたのではないかと考察した。

【ブレワイ考察】厄災復活を予言した”占い師”とは何者なのか?【ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド】 - YouTube

 


ブレスオブザワイルドで名前は出てくるものの一切の描写が無いのは「王妃」「占い師」「師匠」である。

 

厄災の黙示録で、王妃はほんの一瞬だけ登場している。

 

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また、仮にアストルがブレスオブザワイルドの占い師をモデルとしているならば、師匠をモデルとしたキャラクターもどこかに登場しているかもしれないと想像する。

 


王宮で歌を奏で、姫のことが大好きで、時にリンクに嫉妬し、姫を助けるためにひとり奔走するキャラクター。

 

 

 

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「テラコ」である。

 

もちろんテラコがブレスオブザワイルドの宮廷詩人というのは多少無理がある。
だが、その立場は重なる部分も多い。
王妃もアストルもテラコも、本家の彼らと本質的なものは変わらないと思うのだ。

 


姫を助けたかった師匠。

その願いは、厄災の黙示録の「テラコ」として叶えられていたのかもしれない。

 


師匠が持っていた「思い出」

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DLC第2弾「英傑たちの詩」のエンディングは、カッシーワからあるものを授かる。
百年前の叙任式の後に仲間たちと撮った「写し絵」である。

 

それは師匠の資料の中に紛れ込んでいた。

写し絵に写ってもいなければその場にさえいなかった師匠が、何故持っていたのだろう。
貰ったのだろうか。
それほどまでに皆と親しかったのだとしても、どこか釈然としない。

 

そもそも、大厄災で城から逃げた時に荷物など持ってきてはいないだろうし、それ以降はハイラル城に入って探すことさえ不可能に近い。

 


では、その中に写っている誰かのものだろうか。

 

上記のとおり、ハイラル城から探し出したとは考えにくい為ゼルダの所有物ではないだろう。

 

英傑たちがそれぞれ写真を持っていたとしても、遺品である貴重な写真をその遺族や後継者たちから師匠が引き取るような理由は思いつかない。

 

 

この写し絵の本来の持ち主は、リンクではないだろうか。

 

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ハテノ村の実家にあったのかあるいは別の場所かは分からないが、世界中を旅する師匠がどこかで偶然見つけたのかもしれない。

 


師匠はリンクのために、大切な仲間たちとの思い出を詩にしようと思い至った。
そしていつか目覚めたリンクに詩とともに渡そうと、その時まで大切に持っていたのではないだろうか。

 


未完成だったその詩は、在りし日のハイラル城での出来事。
その詩を完成させることが、師匠の遺志を継いだカッシーワの夢だった。

 

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『英傑たちの詩』


夕陽に照らされた皆の顔が浮かぶ。
何気ない会話、慣れない記念撮影、近づく距離、深まる絆。

 

仲間たちと過ごした日々は、リンクにとってかけがえのない宝もの。

 

 

 

ハテノ村の家で写し絵を飾る。

 

ぴったりと、収まるべきところへ帰ってきたかのように。

 

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