前回に引き続き、今回もゲルド族について考えていく。
今回注目するのは、ゲルド高地にある「巨大な穴」である。
大地にぽっかりと口を開けた不気味なこの穴は一体なんなのか。
穴を祀っているイーガ団のアジトは元々なんだったのか。
また、そこから考えられる昔のゲルド族の暮らしなどについても考察していく。
三つの穴
ゲルド高地の名所といえば、底が見えないほどの深さがある巨大な穴だ。
ゲルドの塔の穴の特徴はなんといってもその大きさで、マップで見るとゲルドの街と同じくらいの広さはありそうだ。
塔の高さもまたとんでもないものである。
イーガ団のアジトにも同じような穴がある。
直径はゲルドの塔の穴よりもはるかに狭いが深さはそれなりにあり、何より完璧な円形をしているのが特徴だ。
ついでに「厄災の黙示録」も参考にすると、アジト内部にもうひとつ同じような穴がある。
どちらも穴の周囲にシーカー族特有の模様が入った幕のようなものが付けられいるが、穴を祀っているのだろうか。
アジトの穴と塔の穴は形状は異なるものの、場所も近いため無関係ではないように思っている。
ちなみにイーガ団のアジトは、一万年前に追放された一部のシーカー族がハイラル王家の権力が及ばないゲルド地方に逃げ込み、ゲルド族の遺跡だったこの場所を間借りしたものだとされている。(参考:マスターワークスP.321)
すなわち元々はゲルド族のものだったということだ。
八体の英雄像や内部の壁など至る所に刻まれた鎖のような模様は、おそらく当時のゲルド族の意匠だろう。


この模様は、穴の周囲にも確認できる。
アジトは元々ゲルド族のもので、穴の周囲の模様はゲルドの模様。
つまりこの穴を掘ったのは、当時のゲルド族という風に考えられるのではないだろうか。
もしそうだとすると、ゲルドの塔の穴も当時のゲルド族(以外、旧ゲルド族)に関係しているのだろうか。
このままでは埒があかないので、ここでひとつ仮説を立てよう。
これら三つの穴は「旧ゲルド族によって掘られた穴」だと仮定して考えていく。
穴の正体とは?
これらの穴が旧ゲルド族によって掘られたものだとすると、その理由はなんだろうか。
そもそも穴はいつからあるのだろう。
「イーガ団がゲルド地方に逃げ込みゲルド族の遺跡を間借りした」という話から、その頃には既に旧ゲルド族はいなかったという風にも受け取れる。
とするならば、穴を掘ったのは"一万年よりも前"ということになる。
アジトの穴がそうだとしたら、ゲルドの塔の穴も一万年より前からあったと考えるのが自然だろう。
一万年よりも更にずっとずっと昔。
旧ゲルド族が掘っていた穴は、彼女たちの暮らしに欠かせないものだったのではないか。
個人的な意見ではあるが、この巨大な穴の正体は「採鉱跡」ではないかと考えている。
穴の正体 その5つの理由
穴の形
これらが採鉱跡と考えられる一つ目の理由は、「穴の形」である。
鉱山には、鉱物の採掘や炭鉱のための穴があるわけだが、現実でもゲルドの穴を凌ぐほど巨大でゾッとするものが存在する。
ゲルドの塔の穴の特徴として、直径が大きく、周囲を螺旋状に削ったような跡があるが、これは「露天掘り」という採掘法を思わせる形状だ。
一方、アジトの穴は直径は小さく、円形の穴が地下まで真っ直ぐに掘られているが、これは「坑内掘り」に見られる立坑だろうか。
採鉱法は大きく分けてこの二種類とされている。
だが問題点もある。
こんなにも巨大な穴を掘って鉱石を運び出すにはそれなりの重機が必要なのではないか。
現在採掘業をしているゴロン族でさえ、ここまで大きな穴は掘っておらず地表の鉱床で手一杯だ。
重機はこの世界には似つかわしくないため、もしかしたらスカウォ時代のように、高度技術を持った採掘ロボット的なものがいたのだろうか。
その辺りは推測の域を出ないものである。
地名
二つ目の理由は、ゲルド地方の「地名」だ。
ゲルド高地周辺の地名には、鉱物に関する名前が付けられている。
ハイラルの地名は、基本的にその土地に関係するものが多い。(例:リト族が暮らすタバンタ地方は鳥類が由来)
ゲルド高地の地名が鉱石に由来するのは、ここが鉱石の産地だったからではないだろうか。
だとしたら、かつて採鉱が行われていたとしてもおかしくはないだろう。
ゲルド族の装飾
ゲルド族の衣装や装飾、そして武器などにはふんだんに宝石があしらわれていることからも、ゲルド族と宝石は密接な関係にあるといえる。
不思議なものである。
ゲルド族はこれだけ宝石が身近に溢れていながら、誰も宝石の採掘を生業としていない。
その入手経路が全くもって不明だ。
他の種族を参考にすると、里全体が彫刻と称されるゾーラ族は、石工や彫金職人の代々受け継いできた技術が今でもあらゆる装飾に生かされている。
資源が豊富なデスマウンテンで暮らすゴロン族は、その剛腕を生かし鉱石の採掘、売買を生業としている。
色彩豊かで保温性に優れた羽毛を持つリト族は、抜け落ちた羽を加工した織物業が発展している。
このように、各種族は基本的に地場産業であり彼らの衣類や身の回りの装飾にはその種族性が反映されている。
しかしゲルド族は種族全体としての産業はないにも関わらず、街は高価な宝石で溢れている。
彼女達の暮らしぶりをみてもそれほど財源があるようには思えない。
だが、これらの宝石が全て採掘を生業としていた旧ゲルド族の遺産だとしたらどうか。
宝石をふんだんに使ったゲルド族の文化に少しは納得できるかもしれない。
スノーブーツ
そして4つ目の理由は、「スノーブーツ」である。
ボテンサがくれるスノーブーツはゲルドの街に入ることが可能だ。
それは何故なのか、同じくボテンサがくれるサンドブーツを参考にして考えてみる。
サンドブーツもまた街に侵入可能であり、説明には"昔のゲルド族が履いていたもの"とある。
砂漠をハイヒールで駆け抜けるなど並外れた脚力を持つゲルド族だが、そんな彼女たちもかつてはサンドブーツを履いていたのだ。
今は作り手がいなくなってしまったため超レアものらしく、このブーツを履いているとゲルド族にモテるのだそうだ。
モテるかどうかはさておき、"昔のゲルド族が履いていた"というのは気になる情報である。
スノーブーツにはそのような情報はないが、同じく街に入れる靴であることから、サンドブーツのように昔のゲルド族が履いていたものという可能性もあるだろう。
スノーブーツが必要な場所は、雪山である。
すなわち昔のゲルド族は砂漠だけでなくゲルド高地にもいたかもしれないということだ。
だが、ゲルド族が砂漠と雪山で機能性に優れた靴を履いていたというのはどこか引っかかるものがある。
なぜならゲルド族は古の時代から今と変わらず女性らしい民族衣装で靴もお洒落なデザインである。勿論ブーツではない。
美意識が高い彼女たちがサンドブーツやスノーブーツのような機能性ばかりを重視した靴を履いていたとは想像しがたいものである。
それでも履いていたのだから、それなりの理由があるに違いない。
例えば、昔のゲルド族というのがゲルド高地にいた旧ゲルド族のことで、そこで鉱石の採掘や運搬などの重労働をしていたのなら、機能性に優れた靴を履くのは当然ではないだろうか。
イーガ団のアジト
そして5つ目の理由は、「イーガ団のアジト」である。
旧ゲルド族の所有地だったこのアジトは、岩を掘って造られたもので内部は複雑な構造になっている。
厄災の黙示録ではさらに奥へと広がり、用水路がある空間など地下深くにまで繋がっているのが確認できる。
そのことから、ここは採鉱のために掘られた坑道なのではないかと考えている。
至る所に置かれた宝石類はその名残だろうか。
アジトの穴は先程のとおり「坑内掘り」だとすると、底には坑道が続いているはずである。
アジト内部と大穴は、地下で繋がっているのだろうか。
ここが坑道だとすると、入り口に佇む八体の像は鉱員の安全を祈願して置かれたものなのかもしれない。
鉱山にいたのは誰か
上記の5つの理由によって、ゲルド高地の巨大な穴は旧ゲルド族による採鉱跡なのではないかと考えてみたが、では実際に採鉱をしていたのは誰だろうか。
もちろんこれまでの考察から旧ゲルド族だと思っているが、
鉱山での仕事は過酷で常に危険と隣り合わせである為、ゲルド族の中でも主に身分の低い人たちが働いていたのではないだろうか。
そのような考えが頭に浮かんだ理由は、サンドブーツについてのボテンサのこの発言である。
ボテンサは良くも悪くも嘘をつかない人間である。
サンドブーツが昔のゲルド族のもので、男ものだとしたら、
昔のゲルド族には男がいたというのか。
ちなみにゲルド族には男はいないとされているが、ガノンドロフ以降ゲルド族に男が生まれたかどうかは、"どちらともいえない"というのが個人的な意見である。
なぜなら実際には生まれているからだ。
詳しくはこちらの記事を参照
あまり想像したくはないが、ゲルド族は厄災の元凶を生み出してしまったことに責任を感じているため、仮にもゲルド族に男が生まれてしまった場合、もしかしたら差別的な扱いがあったのかもしれない。
あるいはハイラルとの国交の為、男が生まれてもその存在を隠しながら密かにゲルド高地で暮らすことを余儀なくされたのか。
そのように外界から追いやられたゲルド族の男は、鉱山で資源を掘り起こすなどしてゲルド族を陰で支える存在として生きていたのかもしれない。
過度な妄想はこのくらいにしておく。
ということで、ゲルド高地の「巨大な穴」については、旧ゲルド族によって採鉱が行われていた跡であり、もしかしたらそこにはゲルドの男の存在があったのかもしれないという結論に至った。
ちなみに、鉱山の坑道には新鮮な空気を取り入れたり水を排出するための入り口が複数必要だとされている。
ひとつの抗口はアジトの入り口で、そこを守るように英雄像が置かれていた。
もうひとつの抗口があるとするならば、それもまた、どこかでひっそりと守られているのだろうか。
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